vol. 317(2023年12月号)掲載

各界から長崎県同友会会員へ向けた熱きメッセージ

来るべきデジタル社会への対応について

 長崎県中小企業家同友会様におかれましては益々ご盛栄のこと心よりお慶び申し上げます。
 わたしたち税理士は中小企業者経営者の身近な相談役として税に関することはもちろん経営相談や個人的なことまで多岐にわたり相談をお受けしております。
 最近とくに多い相談はインボイス関連で、あらためて消費税に対する周知不足を実感しているところです。また来年1月から施行される「改正電子帳簿保存法」に関しましても十分に準備ができているか心もとない状況です。各制度について不明な点は早めに顧問税理士にご相談いただきたいと思います。
 税理士業務を行っているなかで、わたしがとくに危惧しているのが中小企業のデジタル化です。デジタル化は業務の生産性を飛躍的に向上させる効果があり官民あげて積極的に推進しています。しかしながらそれに比し中小企業の対応はかなり遅れているのが実情です。
 その原因として日本独特の商慣行と中小企業経営者の高齢化が背景にあるのではないかと感じています。デジタル化はこれまで長年にわたって培ってきた商慣行に変革をもたらすとともに、これまで積み上げられた経営資源が活かせなくなる一面があるからです。
 税理士界ではここ数年電子申告の普及促進に取り組んできました。その結果、全法人の電子申告の利用割合が90%以上、税理士関与にいたってはほとんどが電子申告となっています。電子申告の普及により税理士の業務スタイルは大幅に変化し生産性は向上したものの、反面申告用ソフトの導入やセキュリティー対策など多くの負担が発生しています。
 これから迎えるデジタル社会は申告等に止まらず事業取引全般にわたっていきます。その世界では中小企業を含めたすべての事業者がデジタル環境下で業務を行うことになり、それに対応できなければ市場から退場せざるを得ない状況が想定されます。
 若い経営者やデジタル化に強い経営者は対応できると思いますが、経営経験の豊富な高齢経営者とってハードルが高いと想像されます。
 インボイスや改正電子保存法の導入はまさにデジタル社会への入口です。貴会におかれましては、デジタル化に向け連携して業務改革を行い会員皆様の事業がこれまで以上に発展されますことをご祈念申し上げまして、私からの提言とさせていただきます。

九州北部税理士会、長崎地区連絡協議会 会長

宮地 学

1955年8月12日生 1978年3月 長崎県立大学経済学部卒業 1985年3月 税理士登録 1995年4月 中小企業診断士登録 2019年7月~2023年6月 九州北部税理士会 佐世保支部長 2023年7月~日本税理士会連合会 理事       ~九州北部税理士会 副会長       ~九州北部税理士会 長崎県地区連絡協議会 会長