vol. 319(2024年2月号)
各界から長崎県同友会会員へ向けた熱きメッセージ
「地域内循環社会の
形成」をめざして
長崎県中小企業家同友会の皆様におかれましては、地域経済の活性化や行政活動などに多大なご支援並びにご協力を賜っていますことに厚くお礼申し上げます。
さて、波佐見町では、2023年3月に第6次波佐見町総合計画を策定し、「創る・つなげる・超えていく 暮らしと絆を大切にするまち」を理念に据え、向こう10年間のまちづくりのビジョンを定めたところです。
その中で基幹産業である窯業については、「波佐見焼」の認知度が向上し、増加した消費者ニーズに応えるため、消費者のライフスタイルの変化に対応した商品の開発や需要に応じた生産体制を確保することが必要で、今後、様々な施策を進めることにしています。
一方で、窯業界が長年抱える後継者不足、原材料確保及び産業廃棄物処理が課題となっています。
特に製造過程で排出される「石膏(せっこう)型」のリサイクルは産地としても長年の懸案でありました。
石膏型を使った成形は、波佐見焼の特色の一つで、溶かした陶土(泥しょう)を石膏型に流し込み、水分を吸収することで生地を成形します。
その石膏型は100回ほどの使用で劣化して、使用できなくなり、年間廃棄量は約700トンともいわれています。
6年前には、県内の最終処分場での処分が難しくなり、中間処理施設に滞留するという問題が表面化しました。
そこで、町が音頭をとり、専門家を招聘し、町内の業界団体、多くの関係者を巻込み検討を進めました。
また、国・県の検査機関などからも意見を求めながら、リサイクル方法について研究を進め、石膏に含まれている「カルシウム」により、肥料として活用できる可能性が広がりました。その後、様々な手続きを経て正式に肥料登録が実現し、利活用が始まりました。
その肥料を使用した水田で栽培された米を米粉に引いて、町内の食材を組み合わせてクッキーを作成し、波佐見焼の器に入れて開発した「波佐見陶箱クッキー」が好評を博しています。
また、お米自体もブランド化し「八三三米(はさみまい)」とネーミングし販売を開始したところです。
波佐見町では、これまで「負」のイメージが強かった廃石膏のリサイクルへの道筋をつけ、その拡大に努めており、「地域内循環社会の形成」を行い、社会・消費者の要求に応え、次の時代に波佐見焼をつなぎ「富」に変えられるよう推進して参りたいと考えています。
この取り組みは、地場の企業の皆様のご協力なしでは成し得なかったものであり、今後も様々な課題並びに地域経済の発展になお一層のお力添えをお願い申し上げます。
結びに、波佐見町への変わらぬご支援をお願いし、長崎県中小企業家同友会並びに会員皆様方の今後ますますのご活躍ご発展をご祈念申し上げます。

波佐見町長
前川 芳徳
1958年 5月 波佐見町生まれ
1977年 3月 長崎県立佐世保工業高等学校卒業
1977年 4月 波佐見町役場入庁
2019年 3月 定年退職
2021年 4月 副町長
2022年 9月22日~現在 波佐見町長(1期目)
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